今回は、面接審査有りの特許査定率の活用方法を説明します。
面接審査有りの特許査定率は、面接記録又は応対記録がある特許出願(以降、面接審査有りの特許出願)だけで集計した特許査定率です。事務的な連絡等でも記録が残ることがあり、実質的な特許性の議論が行われた確証があるわけではないので、予めご了承下さい。
2013年以降における面接審査有りの特許出願に対する査定等の集計結果は、下記の通りです。面接記録等の有無に関係なく集計した特許査定率は、73.88%です。面接審査を実施すると、統計上、特許査定率が14.21%上がるようです。
特許査定数: 144,823
拒絶査定数: 17,682
ファーストアクション後の取下げ等の数: 1,893
特許査定率: 88.09%
特許審査官ごとに集計した特許査定率の上昇の分布は、下記の通りです。特許査定率の上昇は、面接審査有りの特許査定率から、面接審査の有無に関係なく集計した特許査定率を引いた値です。面接審査無しの特許査定率で引いた方が正確かもしれませんが、今はこの計算式にしています。特許査定数等の合計が50未満の特許審査官は、カウントしていません。
上記の分布の通り、日本全体の平均の14%前後が多いですが、やはりばらつきがあります。元々の特許査定率が低ければ、面接審査による特許査定率の伸びしろがあり、元々の特許査定率が高ければ、逆に伸びしろがないので、上昇が一概に面接審査の効果ということはできませんが、面接審査の要否を検討する際の1つの目安になります。
上昇が大きい特許審査官は、積極的に面接審査を検討した方が良いでしょう。下記の表は、面接審査による特許査定率の上昇が大きい上位30位の特許審査官のリストです。氏名等は、伏せます。特許査定数等の合計数が50未満の特許審査官を除外したランキングになります。
上記の表のように、上昇が大きい特許審査官が審査を担当した場合、面接審査に要する費用的・業務的なコストを払ってでも、面接審査をする価値があります。将来的な拒絶理由通知・拒絶査定を回避できるのであれば、トータルで考えるとコストを削減できる可能性もあります。私が中間処理を担当する案件は、全て統計情報をチェックしていますが、20%以上の上昇がある特許審査官であれば、まず間違いなくクライアントに面接審査を提案しています。
逆に、上昇が小さい特許審査官もいます。面接審査を実施することで、逆に特許査定率が下がる方もいるようです。このような方が審査をご担当された場合、面接審査のコスパが良くないので、積極的には面接審査を実施しなくても良いかもしれません。もちろん、特許査定率の上昇は、過去の傾向に基づく確率的な話なので、面接審査が有効に働く可能性もあるので注意が必要だとは思います。
最近では、オンライン面接や電子メールによる補正案の事前確認といった手段もあります。面接審査を手軽に実施できる環境がありますので、面接審査有りの特許査定率の上昇を考慮しつつ、面接審査を積極的に活用すると権利化業務の改善につながる可能性があります。
面接審査有りの特許査定率の活用方法は、以上になります。次回は、補正せずに応答した場合の特許査定率の活用方法を載せる予定です。
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