今回は、特許査定率の活用方法を説明します。
特許査定率は、特許査定数/(特許査定数+拒絶査定数+ファーストアクション後の取下げ等の数)で計算しています。特許査定率の計算式は、特許行政年次報告書と同じです。
特許査定率の分布は、下記の通りです。分布内の棒は、横軸の特許査定率の特許審査官の人数です。下記の分布では、2023年の査定等を集計しています。上記計算式の分母が50未満の特許審査官は、カウントしていません。
特許査定率は、技術分野によるところもありますが、ある程度のばらつきがあることが分布から分かります。ある審査室では、特許査定率が90%近い方がいる一方で、50%を切る方もいます。このように、どの特許審査官に審査をご担当頂くかによって、特許査定の得やすさは異なります。
では、特許審査官の特許査定率をどのように活用したら良いでしょうか。
その1つとして、拒絶対応時の補正有無や補正量の検討が挙げられます。例えば、特許査定率が高い審査官は、確率的に特許査定を得やすい以上、少しの補正でも特許査定になる可能性があります。逆に、特許査定率が低い審査官は、ある程度の補正をしなければ特許査定にならない可能性があります。拒絶対応の本質的な部分は、特許審査官が指摘した具体的な内容ですが、特許査定率を活用することで、より柔軟な対応が可能になります。
他の活用方法として、面接審査(電子メール等による補正案の事前確認を含む)の要否の判断が挙げられます。特許査定率が低い特許審査官は、確率的に特許査定を得にくい以上、いつも通りの感覚で応答すると拒絶査定になる可能性があります。面接審査を実施して事前に心証を聞くことで、無用な拒絶査定を避けられる可能性があります。
一方で、面接審査には、代理人費用や業務負担といったコストがかかります。特許査定率が高い審査官であれば、面接審査無しで応答しても、特許査定を得る確率が高いので、無用なコストの発生を避けられる可能性があります。このあたりのバランスを検討するために、特許査定率を活用することが考えられます。面接審査による特許査定率の上昇率も集計していますが、それは別の機会に投稿します。
また、これは活用方法といえるか分かりませんが、個人的には、特許審査官の特許査定率を確認することによって心理的な負担が軽減する気がします。例えば、正直のところ「いくつか指摘を受けたけど、この特許査定率なら厳しい方だから仕方ないのかな。」と考えることもあります。権利化業務は、誰とも話さずに黙々と行うことが多く、ストレスを抱えている方も多いと思いますが、特許査定率等の統計情報を確認することによって、心理的な負担を軽減する効果を感じています。
他の活用方法もあるとは思いますが、主な活用方法は以上になります。これはと思う活用方法があれば、ぜひコメントをお願いします。
次回は、面接審査を実施した場合の特許査定率の活用方法を投稿する予定です。私が最も活用している統計情報の1つです。お楽しみに!
審査官ラボ 運営者
竹下 賢
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